ケアの現場リーダー層にとって、人々の情報活動の変化はとても大きな影響を与えます。特に、スマホによる人々の情報収集、情報発信のリテラシーの変容はケアの現場リーダーに要求される指導力にも大きな変化をもたらしました。ここでは「ケアの現場リーダーにとっての動画リテラシーの重要性」を中心に、ケアを取り囲む環境変化やスタッフの気質変化を踏まえていろいろと考察してみましょう。
変化する人材育成の現場で、いま必要な指導スキルとは
1. はじめに:リーダーの「教える力」が問われている
介護やケアの現場では、スタッフ育成がリーダーにとって最も重要な役割の一つです。かつては「現場で背中を見て学べ」といったOJTが主流でしたが、現在ではそのやり方では若手スタッフの育成が追いつかないケースも多く見られます。
その理由の一つに、人材の気質の変化と、ICT(特に動画)の浸透という社会環境の変化があります。
本記事では、**ケア現場のリーダーがキャリアの中で磨くべき「動画リテラシー」**に焦点を当て、その重要性と実践的な活用方法を掘り下げます。
2. マクロ環境の変化:DX化・人材多様化・情報消費スタイルの変化
■ デジタル化と介護DXの推進
政府主導で進む「介護DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、記録や業務の効率化だけでなく、人材育成にも及んでいます。現場ではオンライン研修、Eラーニング、動画マニュアルの活用が進んでおり、教育の手法そのものが多様化しています。
■ 人材の国際化・Z世代の台頭
現場に入職するスタッフの中には、外国人やZ世代(1990年代後半以降生まれ)が増えています。彼らはスマートフォンで動画を日常的に視聴し、「テキスト中心のマニュアルよりも動画のほうが理解しやすい」と感じる傾向が強いです。
このような背景から、「動画で教えること」自体が教育のスタンダードになりつつあります。
3. ミクロ環境の変化:現場のOJTの限界と動画のニーズ
■ 現場の多忙化と属人的OJTの限界
リーダー自身も現場業務に追われ、「一人ひとりに丁寧に教える時間がない」という声が多く聞かれます。加えて、教え方が属人的で「教わる人によって理解度が違う」という課題もあり、教育の均質化が求められています。
■ 若手スタッフの学習傾向の変化
今の若手世代は「文章を読んで理解するより、動画で“体験的に”学ぶ」ことを好みます。これは認知科学でも裏付けられており、動画による教育は視覚・聴覚の多重インプットにより理解定着が高まるとされています。
4. なぜ動画リテラシーがリーダーに必要なのか?
動画リテラシーとは、単に「動画を見るスキル」ではありません。以下のような複数の能力が複合的に求められます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設計力 | 教えるべき内容を「何を、どの順番で、どのように」動画にするか構成できる力 |
| 表現力 | 実演やナレーション、スライド等を活用して伝える力 |
| 撮影・編集力 | スマホやタブレットを活用し、簡単な動画撮影・編集ができるスキル |
| 配信・共有力 | 動画を適切なチャネル(LINE、YouTube限定公開、LMS等)で安全に共有する力 |
| フィードバック力 | 動画を見たスタッフからの反応を分析し、育成の次の手を考える力 |
このように、動画リテラシーは、**デジタル時代における「教育設計スキル」**といっても過言ではありません。
5. 実践例:動画活用で現場教育を変える
以下のような形で、現場では動画活用の成功例が出ています。
【例1】「入浴介助」や「移乗」の動画マニュアル
現場のベテランが手本を見せる様子をスマートフォンで撮影し、若手に配信。「繰り返し見返せる」「見本が明確」と評判。
【例2】外国人スタッフ向けの多言語字幕付き動画
簡単な日本語に英語・ベトナム語字幕をつけた動画を活用。言語の壁を超えた理解促進に効果。
【例3】「NG行動例」を動画化して共有
事故防止やハラスメント対策の一環として、「してはいけない対応例」を動画で共有。テキストよりリアルに伝わり、意識が向上。
6. 動画リテラシーのキャリアへの影響
リーダーが動画リテラシーを高めることは、以下のようにキャリアアップにも直結します。
- 教育担当・育成リーダーへの昇格の機会
- 施設間・法人間での指導動画共有により、法人内の“教育資産”構築への貢献
- 将来的に「地域包括ケア」推進の中核人材として、研修講師やコンサル的役割への展開
7. これから始めるための第一歩:スマホで始める簡単動画指導
最初から完璧な動画を目指す必要はありません。まずは**スマートフォンと無料アプリ(例:CapCut, InShot)**を使って、短い動画(1~3分)を撮影・編集してみることから始めましょう。
次に、職員会議で試験的に上映して反応を見る。そして動画への反応から「次はどんな動画が必要か」を考える――。この繰り返しこそが、動画リテラシー向上の近道です。
8. おわりに:変化の時代に、伝え方も進化する
ケアの現場は今後、より多様な人材、より複雑なニーズに応える場へと変化していきます。その中で、リーダーに求められるのは「伝える力」の革新です。
文章や口頭指導だけでは伝わらない部分を補い、記録に残り、再利用できる教育資源としての“動画”を使いこなす力――それがこれからのリーダーのキャリア形成において、確実に重要なスキルとなります。
「人を育てる力」が、「あなた自身のキャリアを育てる力」でもあるのです。
